人権擁護法案



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この法案は、法務省が人権擁護推進審議会(1997年の人権擁護施策推進法の施行とともに設置)の答申、人権救済制度の在り方について(2001年5月25日)を受けて作成・立案したものである。この答申は、現在の人権救済の制度である人権擁護委員制度が果たしてきた役割を評価しつつも、実効的な救済という観点からは十分とはいえないとして、人権擁護委員制度にかわる新たな人権救済制度の創設をもとめている。法案は2002年の第154回国会に提出され、第155回国会、第156回国会と3会期連続で審議されたが、2003年の衆議院解散の際に廃案となった。しかし法案の再提出を目指す方針は変わらず2005年2月、政府・与党が一部修正を加えた上で第162回通常国会に再提出する方針を固めたが、自民党内で反対意見が噴出した結果、自民党執行部は2005年7月に第162回国会での法案提出を断念した。だが、自民党の中川秀直国対委員長は2005年9月18日に放送されたサンデープロジェクトで法案が再提出されるであろうと言う見通しを示し、同年9月29日の参議院本会議では民主党の神本美恵子議員の人権侵害の問題に関する質問に対して、小泉純一郎内閣総理大臣が「人権擁護法案を、出来るだけ早期に、提出出来るように努めて参ります」と答弁して法案成立に意欲を見せた。

この法律案により設置される行政機関である人権委員会(仮称、以下同じ)に対して、その権限の大きさ、委員の選出過程の不透明さなどが批判の対象となっている。これについては国連人権小委員会より提案された国内人権機構の地位に関する原則(パリ原則)に沿ったものとなることが求められている。

令状なしでも「立入検査」(家宅捜査)ができる二万人の「人権擁護委員」が、「人権侵害」を取り締まる。しかも、その「人権侵害」の範囲が極めて曖昧とされる「人権擁護法案」。

自民党と公明党はこの法律の成立に積極的であった。一方共産党は弾圧に悪用されると反対した。

自民党は党内に少なからぬ反対派を抱えていたため、2005年、古賀誠ら法案推進派は法務部会の強行突破をはかった。古賀らは、既に結論を決めており、「論議には一切応じぬ」という議事進行を予定していた。ここを通り国会へ提出されてしまえば、法案の成立はほぼ間違いない。人権擁護法が最も誕生に近づいた瞬間である。

しかし、反対派の自民党議員や日本会議国会議員懇談会(平沼赳夫会長)は法務部会へ結集し、これに公然と対峙した。そして、亀井郁夫、城内実、衛藤晟一ら多くの議員が机を叩きながら激しい反対意見を次々と述べたため、会場は混乱に陥る。かくして、法案提出の企ては遂に失敗に終わったのであった。

その後、産経新聞も人権擁護法案の問題点を報じ、反対の世論を喚起した。

また、「救う会」が「日本人拉致問題の解決の妨げになる」として反対し、日本文化チャンネル桜等のメディアや西村幸祐、櫻井よしこ、西尾幹二ら識者、民主党の保守系議員にもこれに同調する意見が出るようになった。反対の市民集会も開催された。更に、いわゆる「人権派」からの法案反対の声が加わり、人権擁護法案は左右両陣営から攻撃されることになるのである。

一方、野党の民主党は、2005年7月の自民党執行部の法案提出断念を受け、8月1日、その対案である人権侵害による被害の救済及び予防等に関する法律案(人権侵害救済法案)を国会へ提出した。人権擁護法との主な違いは以下の通りである。

  • 中央人権委員会(人権擁護法での「人権委員会」に相当する)に加え、地方人権委員会が設置される。
  • NGOや「人権侵害による被害を受けたことのある者」等、特定の運動家が人権委員になるように努めなければならないと明文化されている。
  • 内閣総理大臣に対し意見を提出することができる。

民主党案は2005年8月8日の衆議院解散により廃案となっているが、第44回衆議院議員総選挙終了後小泉純一郎総理大臣は人権擁護法案の再提出に意欲を見せた。

また、自民党の中での主な推進派の古賀誠元幹事長が七月の郵政民営化法案の衆院採決を棄権したため党の戒告処分を受けて、党人権問題調査会長を退き、自見庄三郎、熊代昭彦ら郵政民営化法案に反対票を投じて自民党を追われ、選挙で落選、不出馬に追い込まれた者がいるほか、内閣府特命担当大臣(金融、経済財政政策担当)となった与謝野馨、経済産業大臣となった二階俊博など法案推進の一線から退き、推進派の有力者で2006年の通常国会への提出に意欲を見せているのは中川秀直政調会長のみとされていた。

一方で、反対派は平沼赳夫、城内実、古屋圭司、古川禎久など総選挙の後落選、または自民党を離党した人物が多く、安倍晋三も官房長官、2006年9月には内閣総理大臣に就任、反対派の「真の人権擁護を考える懇談会」の議連は新会長選出を目指すが、活動は低調である。そのため、法案の制定は仕切り直しの状況となっている。

その一方で、鳥取県議会が2005年10月に人権擁護法案をベースに策定した県人権侵害救済条例を見切り発車的に成立させたが、県内外から厳しい批判が殺到したため、2006年3月24日に条例施行を無期限凍結する条例案が採択され、現在は修正の上施行のための見なおし作業がおこなわれている。法案の反対派はこの条例の廃止を目指しており、その行方が争点の一つになりつつある。 2006年4月27日、市民団体「人権擁護法案を考える市民の会」(代表:平田文昭)によって『危ない!人権擁護法案 迫り来る先進国型全体主義の恐怖』という本が発売された。インターネット上の法案反対派(一部のブログや匿名掲示板2ちゃんねる内等)では、「この本を何とか周知させて、日本を亡国へ確実に導くであろう人権擁護法案を永久に廃案にしよう!」と主張しており、これらの法案反対派の中には「反日外国人が人権擁護法案を悪用する可能性がある」という主張が多い。これに対しては、右翼的・排外主義的であるという強い批判もあり、法案反対派の中でも足並みが乱れている。



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